2020/04/16 15:15

  絵画の存在理由とは何か? 僕は昔からこの問題に囚われ続けている。まあ、
こんなところだろう、というのは幾つかあるのだけれど。
 「抽象画」は、煎じ詰めればインテリアをいっそう効果的たらしめるアイテム。
室内の調度や色彩と緊密に呼応し、あるいは乖離し、そこに居る者にある種の快
感を催さしめ、あるいは住まう人間の理性や諧謔、軽いエスプリまでも感じさせ
る道具となる。
 「肖像画や人物画」は、宮殿を飾ってきたような贅沢な肖像画も含めて、いわ
ば手の込んだ記録といって良い。存在する理由はざっとそんなところ。僕にはあ
まり興味がない(写楽やモディリアーニやピカソなんかは別)。
 さて、「風景画や静物画」。これが実は僕の中では難題だった。写真でも撮っ
て絵画風に加工すれば済むじゃないか、という理屈がどうしても先に立つ。窓を
開ければ、あるいは旅行に出れば本物の風景がそこにある。なにも花を描かなく
ても、本物の花を飾れば済むじゃないか、という理屈だ。
 そこでやっとこさ辿り着いたのが、それらは「もう一つの窓」ではないか、と
いう考え方。他人(画家)が見、感じた世界を、その絵を通して日常的にわれわ
れも観、味わうということ。こんなところでどうだろう。
 部屋には、もう一つ、別世界に通じる「窓」がある。贅沢な話ではないか。そ
の窓を見つけるのは、そこの住人、つまりあなたに他ならない。