2016/05/27 09:34

 もっともっと沢山の方にジクレー版画を楽しんでいただきたいと願っている。この国のインテリアを、センス良く、楽しいものにしていただきたいと心から願っている。一足飛びにヨーロッパの人々がインテリアを楽しんでいるように、とは言わないまでも。
 日本にも、昔は床の間に掛け軸をかけて季節や行事を楽しむ文化があったのだが、住宅の西洋化(ってんですかね?)とともにすっかり姿を消してしまったように思う。茶室なんかだと、絵や書は、むしろ主役だ。空間を支配する。空間を意味付ける。
 室内装飾の観点からすれば、できれば、あまり具体的でない、どちらかと言えば抽象的な、色彩的にも美しいものが望ましいのではないか。絵や彫刻は、いってみれば空間のイヤリングであり、ネックレスなのだから。着ける人を知的に、美しく彩ることに違いない。
 手前味噌だが、僕のジクレーは、その観点からも及第だと思っている。絵や版画は、決して投機の対象であってはならない。加えて、絵を描いた事もない批評家や画商の得手勝手な価値観を鵜呑みにしてはならない。判断はあくまで自分の目に頼る。自分の感覚に委ねる。それがなにより必要だろう。もういい加減目を覚まして、日々の暮らしを今少し楽しい、気分の良いものにしようではないか。
 ジクレー版画は顔料インクのインクジェットで刷る。インクや画材用紙はたしかに少し高いが、それでも他の技法に比べれば大したことはない。美しくて、耐久性にも優れている。これからの版画、複製技法の最有力だと僕は信じて疑わない。
 問題は価格だ。はなから画壇や画商にはあまり関わりたくないので、勝手にやらせて貰うつもり。画商ではなく、むしろインテリア雑貨として扱われるのが望ましい。それぐらいの気持ちでいる。だから、エディションナンバーや自筆のサインを入れても、できればうんと安くしたい。しかし一方で、今のままでも安過ぎる、というご批判をもいただく。あまり安いと、価値がないと思われる、と。それも実際にインテリアの雑貨や服飾を商っている方々から。さあて、どうすれば良いものか。
 冒頭でも申したように、沢山の方に気軽に楽しんでいただくのが僕の願い。儲からなくたってちっとも構わない。僕のジクレーで、少しでも部屋の雰囲気が良くなれば、もうそれで本望。今の価格は、店舗での委託販売の目安、というか上代価格。委託販売を視野に入れることをやめれば、もっとうんと引き下げられると思う。
 まだそれほど捌けてはいないから、すでに購入された方に差額を返還してでも、うんと安くしたいという衝動にかられるこのごろ。でも、安いからといって、絵のオリジナリティや価値は他者のものと遜色がないと自負している。さあて、どうしたものやら。どなたか、正直なところをお聞かせくだされば有難い。本当に悩ましい問題なのだ。
 ここらあたりで、これまでの日本人の絵画への先入観を一度ひっくり返してみるのも面白いかもしれないね。