2016/05/05 23:32

 グラフィックデザインの事務所を立ち上げたばかりの頃、若い頃に勤めていた音楽の出版社から「日本演奏連盟」のお仕事をよく頂いた。例えば「都民芸術フェスティバル」のオーケストラ部門のポスターやチケット、リーフレットやなんか。「ピアノ・フェスティバル」や「弦楽フェスティバル」なんていうのもありましたね。パンフレットなんかも結構沢山。とても良い勉強をさせていただいたと今でも感謝している。ギャラを頂いているのに勉強なんて言うのはちょっと不謹慎かしら。でも、僕たちの仕事は毎日が勉強なのだ。そういうもの。たとえ未経験の分野でも、それまでに積み重ねた経験から最善のものを紡ぎ出す。そういえば有名なソリストのポスターやチラシなんかもやりましたね。
 最近、鎌倉芸術館で催されるアマチュアのコンサートによく伺う。こんなことを言うと不謹慎のそしりを免れないが、演奏はともかくとして、チラシやプログラムがもう少し垢抜けていればコンサートの魅力が増すだろうになあ、なんて独り言を呟くことがままある。でも、アマチュアなのだから致し方なし、と言えば致し方なし。きっと団員の中で比較的そういうのが得意な人が当っているのだろう。
 最近、生業としてのデザインの仕事から少しずつ遠ざかる頃合いなのかな、とふと思うことがある。こちらに引っ越してきてからは、しょっちゅうクライアントとの打ち合わせには出られないこともあって、CI(いわゆるロゴマークやなんかですね)とブックデザインに限ってお引き受けしてきたが、さすがに売れ行きなんかを念頭に置く緊張感が段々身に応えるような年頃になってきた、とふと思うのだ。しかし一方で、この手のデザインは遊びの領域に達していよいよ佳境、という思いもまたある。さあて、どんなものでしょうね。
 そこで、ふと考えた。アマチュアの団体のポスターやチラシの制作を、合間を見て手伝ってあげるというのはどんなものだろう、と。プロの演奏家のものは当然プロのデザイナーが作っている。しかし、アマチュアのものは聞いたことがない。もちろん、伝手を頼って頼むことはあるだろうけど。営利団体ではないから、そんな予算もあろうはずがないし。ただ、こちらもプロである以上、手伝うにしても完全にボランティアというわけにはいかないだろう。また、もしそれを生業にしている人が一人でもいたりしたら、それこそ営業妨害になる。しかし、仮に、5千円でも1万円でも予算をひねり出せるなら、お手伝いして差し上げても良いのではないかしら。なんだか偉そうだけど、僕ならだんだんそんなことも可能な境遇になりつつあると思うのだ。ま、実際にそれが果たして可能かどうかは、もっとよく考えてみないといけないだろうけど。ただ、そんなことで少しでも僕の経験やセンスが皆さんの(!)お役に立つなら、と考える。そうか、でも時間の制約があるから、2案ぐらいのご提案が関の山かな。でもですよ、なにせ、30年以上もこれで飯を食ってきたので、確かにそれなりの洗練があると自負している。プロの仕事というのはやっぱりどこか違うはず。
 加えて、僕は作曲や編曲なんかもしているので、案外それぞれのコンサートのイメージに合ったデザインを提供してさしあげられるかもしれない。それにこんなことを言うと差し障りがあるかもしれないが、こちらも損得勘定抜きの、いわゆる道楽に近い分、肩の力も抜けて案外楽しみながらできるのではないかしら。いったい、楽しくなければこういうのものは長続きがしない。
 このことは、さっき、ふと思いついたこと。もう少しとっくりと考えてみるとしようか。このことに関して、アマチュアの団体の方々にぜひご意見を伺ってみたいものだ。