2016/01/22 19:51

 父が撮り溜めたまま、ほとんどキャンバスに描けずに終わった写真があることは、以前このブログでも触れた。随分前から〝弔い合戦〟のようなことを続けていることにも触れた。油彩の大作は僕には無理だけど(いったい大きな風景画を描きたいと思ったことがない)、スケッチならなんとかなるかもしれないと思ったのだ。
 もう一度、やってみよう。ヨーロッパのスケッチは10年以上も描いていない。あるいはもっとかな。鎌倉のスケッチで、これまでの描き方はもう終わりにしようと思っていたのだけれど、墨でなく鉛筆で描くとなると、どうしても誰かさんの真似になる気がしてならない(実は先日描いてみたけど、面白くなかった)。今度は、今までずっと使ってきたキャンソンという紙から、英国のワットマンという紙に変えてみる。割箸も、ちょっと先を削ってみる。墨汁も、そのままではなく、水を足して、わずかに柔らかくしてみる。実は、今日はコーヒー店で大好きな人たちに会えただけじゃなく、内科の検査の結果、先生にも褒められるわで、ちょっと上機嫌。もう夕方前からビールをいただいている。ほろ酔いでなんだかとても気持ちがよくなって、そうだ、いまスケッチをやると面白い線が描けるかもしれない、という思いがにわかに湧き上がり、そのまま急いで取りかかった。その線描がこの2点。これまでになく面白いように思うのだが、いかが? いい塩梅に肩の力が抜けている。なんだかこれまでの試行錯誤が無駄ではなかったという感慨で、いま一息ついているところ。完成前の絵をお見せするなんていけないのかもしれないけど、そんなことは知ったことではない。ちょっと面白いので、やっぱりお見せしてみようと思った。
 要するにとても嬉しいのだ。彩色は明日。もし上手くいかなくても、もう何度でも同じように描けると思うし、これは僕にしか描けない絵という自信が生まれている。
上のはベニス。下のはトレド(スペイン)です。