2015/08/07 22:06

 今度の東京オリンピックのエンブレムが、盗作の疑いで騒がれている。ベルギーだかどこだかの劇場のマークによく似ているというので、彼の地のデザイナーからJOCに使用差し止めの申し入れがきているとのこと。僕も一応デザイナーでもあるので、この問題についてちょっと触れてみたい。
 率直な感想だけど、ディレクターの佐藤さん?は、この劇場のマークなんてきっとご存知なかったのではないだろうか。もし知っていたら、これほど堂々と表には出せないと思う。だって、盗作ってのは、デザイナーにとっては、最大の恥ですから。しかも、天下のオリンピックですよ。
 たしかに、基本的な構造は似ているけど、やっぱりアイデアの出所がちょっと異なるように思う。人間の考えることは、詰まれば同じようなところに行きつく、とでも言うほかない。それと、なんだかちょっと不運でしたね。今回はちょっとツイていないな、という感じ。ただ、僕ならこのようには作らないことは確か。もっとシンプルに、平筆でサッと掃いたようなイメージを中心に据えるとか、いっそ抽象的なドローイングにしちゃうとか、もうすこし、日本のオリジナリティに考究の歩を進めたと思う。北京の時は、たしか書や水墨画なんかに使われる落款や手描きの署名をイメージして作られていた。とても面白いと思った。やられた、と思った。美しいかどうかは別として、北京のほうが知的であることは確か。
 今度の場合、なかなか美しくまとめられてはいるけれど。それより、マークと下の英文、フォントやバランスのほうがちょっと気になる。ま、言及はここまでにしておきましょう。
 音楽でも、同じような問題を抱えている。この間、中山晋平の「砂山」を混声合唱用に編曲したが、やっている間、なにかに似ているとずっと思い続けていて、思い当たったのは、赤い鳥の「竹田の子守唄」だった。どちらが先かは知らないけど、よくにている。とくに、ソーラドレーソーミーーレーーと、上がって降りてくるところなんか。竹田のほうは、ソーラドレーソーミーーレードー。似ている、とても。でも、これは日本の5音音階の旋法が抱える本質的な問題でもあって、似ていないのです、やっぱり。こういうことを言い始めると、もうきりがない。まったく似ていないに越したことはないけれど。
 十二分に注意を払うしか手はない。日本の詩歌なんかじゃ、昔から「本歌どり」なんて、ぬけぬけとやる方法があるのだけど。著作権やなんかがうるさくなって、それで大金が動いたりするようになってからのことですね、こういう問題が表沙汰になってきたのは。気をつけよっと。